プロフィール
株式会社トーノーデリカ 代表取締役社長 荒井 幹広
岐阜県で2か所、東海北陸地方で6か所しかない食鳥処理場を持ち、ブロイラー生産から食品卸、加工品製造まで一貫して行うトーノーデリカグループ。
肥育方法にこだわった健康で新鮮な鶏肉「恵那どり」を全国へ提供している。
中山道大鋸 社長 大鋸 信行
長年、酒屋として他蔵の造った商品を仕入れて販売し、現在は江戸時代初期から続く中津川市上野の山内酒造場を引き継ぎ、杜氏(とうじ)として日本酒造りに挑戦するなど、地元内外のお客様にお酒を楽しむ喜びを届けている。
お互いの味を2倍にも3倍にもしてくれる、そんな関係
元々、同級生の2人は時には会社の長として、時には友人として長年、切磋琢磨してきました。
お酒と鶏肉は、お互いの味を2倍にも3倍にもしてくれる…そんな関係だと語る2人。
尽きることのない情熱と、それぞれのこだわりによって生まれる「美味しい」の秘密に迫ります。
○酒は蔵の温度が2度から3度が一番作りやすい。鶏肉は24時間がピーク。
大鋸:お疲れ様、今日は寒いところで作業していたからわざわざ着替えてきたよ。
荒井:お疲れ様、酒蔵は寒くないといかんの?
大鋸:そうやね。2℃から3℃が一番、作りやすい。
もろみの温度を決められるでね。6℃とか7℃になってくるとちょっと難しい。
荒井:お肉と似とるね、お肉も0から4℃で管理するのが良いんだけど、家庭用の冷蔵庫やと10℃くらいいっちゃうから鮮度が落ちるのがちょっと早いね。
それと温度もやけど、鶏肉の鮮度のピークは処理してから24時間だから、「朝びき」が大事。
大鋸:じゃあ長い距離運んできたらダメってこと?
荒井:0℃のまま輸送するのはすごく難しいから結局、品質保持がしにくくて、長距離を運ぶとドリップが出たりして鮮度が落ちるよね。
だから鶏肉は「地産地消」で食べるのが圧倒的に旨いし、メリットが多いね。
○ストレスの少ない、健康的な恵那どり。そのこだわりの肥育方法
大鋸:恵那どりって肥育方法が他とちょっと違うんやよね?
荒井:そう。うちは坪あたりの羽数を少なくしてる。
餌に混ぜる抗生物質とか、そういう薬を使いたくなくて、そのためには病気にかかりにくい健康な鶏である必要があって…坪羽数を減らして環境整備をすることで鶏が健康に育ちやすいようにね。
これがこだわり。
○坪羽数を制限することで、お肉は柔らかくなる?
荒井:いや、柔らかくなるというか、締まった肉質になる。
適切に運動して可動域が広いから、肉の旨味が詰まった鶏が育つよね。
歯応えも良くて、水太りしていない鶏かな。
○どの餌を与えるとどのような鶏になるか、日々研究している。
大鋸:餌の研究もやっとるの?
荒井:色目とか肉質とか、個体の生育の率だとか、色んなものを見てね。結局、骨を強くしたいっていう理由があってね。
骨が弱いと無理に体重を支えるから鬱血してしまったりして、お肉に黒っぽいアザみたいなものが出来て見栄えも悪いし…。
大鋸:そんな風になるの?
荒井:なる。無理やり生育だけを求めた餌にすると肉はつくけど、骨の強度が足りなくなる。
そのギャップを埋めていくためには、カルシウムやリンなんかを摂って骨も強くなっていかないとね。
大鋸:そんなの初めて聞いた。
荒井:鶏って、昔は1kgの肉を作るのに穀物が2kgから2.5kg必要だったけど、今は穀物を1.5〜1.6kg摂ると1kgつくよっていうくらい効率が良くなってる。
大鋸:なんで?栄養化が高いってこと?
荒井:そう!それくらい今の鶏そのものや餌の改良が進んでる。
でも普通に考えて、食べたものほとんどが、そのまま肉になるって無理があるよね。
だから骨の強度とか、いろんな所にギャップが出来てしまう。
だから出来る限り無理をさせない様、飼育することが美味しい鶏を作る秘訣だね。
○恵那どりは他の鶏と何が違う?
荒井:例えば、名古屋コーチンと恵那どりの違いってなんだと思う?
大鋸:色?
荒井:そもそも種類が違うんだよね。簡単に言うとね。恵那どりはブロイラーに分類される。
大鋸:ブロイラーって、食べさせて大きくする鶏のことやら?
名古屋コーチンはブロイラーやないの?
荒井:違う違う。ブロイラーは鶏の種類。名古屋コーチンとブロイラーはそもそも種類が違う。(注:ブロイラーは生育が早い鶏肉の品種の総称。47〜48日間ほどで出荷できるのに対し、名古屋コーチンは概ね120〜130日間かかる。)
大鋸:だから大きさでは比べられないってことね。
荒井:ほらスーパーなんかで九州産の鶏肉が買えるでしょ?あれもブロイラーだから。
他の違いはうちで責任をもって育てているかどうか、恵那どりは岐阜県内で坪羽数、無薬、飼料にこだわって育てた鶏で、さらに自社で処理してるっていうことかな。それが恵那どりの定義でもある。
大鋸:元々は一緒なのか…
荒井:だから、何で違いを感じるかっていうと究極は鮮度の違い。地元で、朝びきされた鶏をその日のうちに食べるのが何よりも美味い。
うちはチキンハウスっていう直営のお店があるけど、ここは朝びきされた恵那どりをその日のうちに食べてもらえるように作った。こんなところ他に無いのよね。
大鋸:そうやね。
荒井:岐阜県に2カ所、愛知県に2カ所、静岡に1カ所、三重県に1カ所、これだけしか東海、北陸地方には鶏肉の処理場がないから。
○日本の真ん中、中部地方から全国へ届けられるメリット
大鋸:輸送時間が、西にも東にもほぼ均等に届けられるこの岐阜県に会社があるって、輸送の時間を考えたらすごいメリットじゃない?
荒井:そこがうちの存在意義というか、でもまだ上手く出来ていないところで(笑。例えば大体スーパーに並んでるのは九州の鶏で、普通にこの中津川市でも買えるけど、やっぱり輸送の時間がかかってるから鮮度という意味では、どうしても少し味は落ちてるはずなんだよね。
大鋸:普通はそんなことわからんよね。
荒井:もちろん普通に美味しいし、そういうものだと思って食べ慣れてるからね。疑問に思わない。
大鋸:ネット通販っていう意味でもメリットじゃない?
荒井:そう。24時間で届けられるエリアが多いからね。それでももっと旨味を残したいから梱包方法とか冷凍の技術を上げて、旨味を逃さない方法を模索し続けてる。
○お酒にも鮮度はある?
大鋸:食品とはちょっと違うよね。鶏ほどシビアではない。(網で焼いた恵那どりの肝をゴマ油と塩で食べながら)これは相変わらず美味いね。
荒井:これに合う日本酒はどうやろ。
大鋸:肉類やと本当はワイングラスで飲むような…今風な『恵那山』(はざま酒造)とか合うんやけど、鶏肉はそもそもあっさりした味だから、種類は選ばないね。何にでも合う。
○日本酒の種類は究極、二つしかない。
荒井:日本酒にも土地柄的な違いはあるの?
大鋸:もちろん違いはある。語れば長くなるよ(笑
荒井:あはは
大鋸:お酒は没頭しちゃうからね。みんなハマり込んじゃう。
簡単にいうと、海沿いの酒蔵はあっさり、山間部の酒蔵は濃い。
荒井:ヘ〜それだけ!
大鋸:そう!なんでかっていうと、海のある県の酒蔵は刺身を食べるから綺麗な淡麗辛口なお酒を作ってて、山間部は味噌文化があるから濃いお酒じゃないとダメなのね。
荒井:初心者はそうやって日本酒を選んでみるとわかりやすいかもね。
大鋸:でもここ10年は運送技術が発達して、そういう概念が無くなってきてるっていうのもあるかな。
山の中でも刺身食べられるからね(笑
荒井:鶏肉なんかはホワイトミートで淡白やで、淡麗辛口に合うよね。
大鋸:そうやね。でもタレひとつで変わるよね。塩で食べる場合、日本酒はバッチリ!
荒井:じゃあ今度はモモ!これはレッドミートやけど、どれが合う?
大鋸:これかな!辛口で合うよ。(笠置鶴を進めながら)
あとはやっぱり赤ワインとかかな。
○恵那どりの一番、美味しい食べ方。
大鋸:恵那どりってどうやって食べるのが一番美味い?
荒井:塩焼きでしょ。それが一番の差別化だからね。最近は唐揚げひとつとっても、味付けが濃すぎる。
そんなに濃い味付けしたら、国産・海外産どのお肉でも一緒になっちゃう。
大鋸:その通り!
○日本酒に合うのは素材が良いもの
大鋸:前にトーノーデリカの鶏ちゃんと日本酒のセット作ったら、結構売れてね。(注:鶏(けい)ちゃん…岐阜県中津川市加子母や下呂市の郷土料理で、味噌やにんにくの効いた醤油ベースのタレで漬け込み、キャベツや玉ねぎなどと一緒に焼いて食べる)
荒井:聞いてないけど(笑
大鋸:鯨波(恵那醸造)と鶏ちゃんの味噌と醤油のセットね。
荒井:日本酒と鶏ちゃんも合うけど、炭酸系との相性が良いね。ビールとか。
大鋸:基本、肉でも野菜でも原材料が美味しいものと日本酒は合うよね。
荒井:なるほど!
大鋸:今の若い子たちは濃い味に慣れてるから、日本酒も濃いというかフルーティなものが人気があるかな。
荒井:恵那山(はざま酒造)とか?
大鋸:そうやね。濃い肉とかチーズにも合うしね。
お腹が減ってる時の一杯は、濃いというかフルーティなお酒が美味しいね!
荒井:(ハラミを取り分けながら)これ食べてみて!横隔膜やけど、鶏のハラミって珍しいよ。スーパーではなかなか買えない。
大鋸:トーノーデリカのネット通販では買えるの?
荒井:買える。鶏焼きセットに入ってて、これはみんなに食べてみて欲しい。
大鋸:自宅でフライパンで焼いても大丈夫なの?
荒井:大丈夫。脂を落とすか落とさないかの違いだからね。
○お酒だけで飲み続けられる?
大鋸:基本的に醸造酒は料理と共に、蒸留酒はそれだけでいけるっていう認識かな。例えばウイスキー飲みながらご飯とか焼き鳥食べられるか?って話。
荒井:ハイボールならいけるよね。
大鋸:醸造酒も蒸留酒も、うちにいっぱいあるからネットショップを見てみてほしいね。
お酒は1,000円の料理を3,000円にしてくれるし、逆もある。
荒井:お互いの味を2倍にも3倍にもしてくれる、そんな関係やね。
ともに中津川に生まれ、長年、食に携わってきた2人。
「良いもの、美味しいものを届けたい…」
そんな思いを話す時、同じタイミングで笑顔になり、同じタイミングで眉間に皺を寄せていました。
一人でも多くのお客様の「美味しい」が、これからの2人が届ける商品の味を、さらに2倍にも3倍にもしてくれるのでしょう。
2人はこれからも熱い想いで、中津川から「美味しい」をあなたへ届けます。